前回は の地点で止まっていました。
4コマで先に見る
不安をしずめる運動法
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1問題
机の前で浅く息をする人と、頭上で鳴る警報ベル また不安に…
不安障害を経験した神経科学者ジェニファー・ハイズも、同じ問いから出発しました。
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2しくみ
脳の上から芽が出てくる図 運動が脳を変える
運動はBDNF、ドーパミン、ノルエピネフリンを動かし、不安を下げます。
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3実践
軽やかに走る人と動きの線 6分で十分
短い高強度運動、集中したいなら朝の運動、落ちこんだら自然の中を歩く。
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4変化
バーベルを持ち上げる人 筋トレもしよう
筋トレは記憶を守る海馬や、認知症の予防にもつながります。
一冊の本のおかげで、もう一度運動靴のひもを結んだという人が増えています。タイトルから目を引く『運動の脳科学』(原題 Move!)は、カナダのマクマスター大学で運動と脳の関係を研究してきた神経科学者、ジェニファー・ハイズが書いた本です。自分自身が長いあいだ不安障害に苦しんだ経験をもとに、運動が脳にどんな変化をもたらすのかを、みずから研究し実践した内容をつづっています。
6分で脳が変わる――運動の脳科学が語る本当の理由
[写真のコンセプト:脳の若さを守る血流の力]老化で黄色く縮んだ脳(左上)。けれども運動をすると、新しい微小血管が網の目のように縮んだ部位を包みこみ、赤く酸素の豊富な血液を送りこんで、脳をふたたび健康な赤い色へと若返らせる様子。
この本がとくに心に響くのは、運動は健康にいい、というありきたりの話ではないからです。不安、集中力、うつ、依存、記憶力と老化、創造性まで、いくつものキーワードを通して、運動が脳を実際にどう変えるのかを科学的に解き明かしてくれます。そして、その方法が大げさなものではなく、誰でも今日からまねできるレベルだという点も、多くの読者が共感しているところです。
私もこの本に出会って、それまでなんとなく知っていた運動の常識がどれほど足りなかったかを感じました。そこで今日は、ジェニファー・ハイズが本で紹介している脳科学的な実践法を、私なりにまとめてみました。運動を始めようか迷っている人、あるいはすでにしているけれど方向が定まらない人に、この記事が役に立てばうれしいです。
[写真のコンセプト:脳の体内時計をリセットする運動]脳の中央にある体内時計(左上)が壊れ、歯車が空回りしている。けれども運動をすると、時計のぜんまいを巻きなおすように、体内時計がふたたび金色に輝いて規則正しく動き(右上)、脳全体に安定したインディゴ色の睡眠の信号を送る様子。
不安障害を経験した脳科学者が、みずから見つけた答え
「運動は脳の報酬回路を正常にする。 依存物質が去ったあとを天然の快楽物質で満たし、『渇望』をしずめる。」
ジェニファー・ハイズは、マクマスター大学で運動と脳の健康を研究する神経科学者です。皮肉なことに、脳を研究する専門家でありながら、本人は長いあいだ不安障害に苦しんでいたといいます。薬やカウンセリングのほかに、みずから体を動かす方法で症状がよくなるのを経験し、運動が脳に与える影響を本格的に掘り下げはじめたそうです。
そうして生まれたのが、この本です。韓国ではヒョンデジソン出版社から、イ・ヨンレの翻訳で紹介され、『不安障害に苦しんだ脳科学者が発見した運動の力』という副題がついています。自分の話を率直につづりながら、関連する研究結果もきめ細かく織りこんだ構成なので、信頼して読めるという評価が多い本です。
運動が不安を減らす脳科学的な理由
本がまず取りあげるテーマは不安です。体を動かすと心臓が速く打ち、息が上がりますが、こうした体の反応は、実は不安なときにあらわれる反応に似ているのだそうです。運動をくり返すうちに、脳はこの体の反応を脅威ではなく慣れた刺激として受けとめるようになり、その結果、不安な状況でもあまり過敏に反応しないよう訓練される、という説明です。
実際に本では、短ければ20分ほどのウォーキングや軽い有酸素運動だけで、不安の値が目に見えて下がったという研究例が紹介されています。大げさな運動でなくてもいい、という点が印象的です。毎日同じ時間に20分歩く習慣だけでも、十分に始められるということです。
6分で十分――高強度運動の秘密
本の中でもっとも話題になった内容のひとつが、6分間の運動です。短く強度の高い運動をすると、脳由来神経栄養因子、よくBDNFと呼ばれる物質が大きく増えるといいます。この物質は、記憶を担う脳の部位である海馬の神経細胞が育つのを助けます。
あえぐほど息が切れる高強度インターバル運動を、短くてもくり返すと、長い時間軽く運動するよりも、むしろ記憶力に関する効果が大きくあらわれることがある、というのが本の説明です。時間がないから運動できない、という言いわけが通用しない理由でもあります。階段をすばやく上り下りしたり、短いダッシュを何回かくり返したりするだけでも、この効果をねらえます。
集中力が落ちたら、朝の運動から
集中できず気が散ると感じるときにも、運動が助けになりうると本は説明しています。運動をすると、ドーパミンやノルエピネフリンといった神経伝達物質の分泌が増え、これらが注意力と実行機能を担う脳の領域を活性化させるからです。
とくに、一日のどの時間に運動するかによって効果が変わりうる点も興味深いところです。午前中に体を動かすと、その日一日の集中力と気分に、より長く影響するという説明です。勉強や仕事の前に、短くても体をほぐすルーティンをつくってみることも、実践法として紹介されています。
落ちこんだ気分には、自然の中を歩くと2倍の効果
本ではうつ気分を扱う部分で、いわゆるグリーンエクササイズ、つまり自然の中でする運動を強調しています。室内で運動するときよりも、木や草のある空間で歩いたり走ったりするときのほうが、気分がよくなる度合いが大きかったという研究結果が紹介されています。
ジムのランニングマシンで走るのももちろん意味がありますが、できれば公園や散歩道のように緑のある場所で歩く時間を増やしてみよう、というアドバイスです。涼しくなってきたこの季節には、とくに実践しやすい方法だと思います。
筋トレが認知症予防にもつながるという話
[写真のコンセプト:脳の集中モードとぼんやりモードの結びつき]「創造性は『ぼんやり』と『集中』の調和から生まれる。運動はふたつの脳の状態を行き来しながらアイデアを統合する。」創造的なアイデアは、自由な想像の状態であるデフォルト・モード・ネットワーク(DMN)と、論理的な判断の状態である中央実行ネットワーク(CEN)が柔軟に統合されるときに生まれます。運動は DMN を活性化させて自由なアイデアを思い浮かばせ、運動後の集中力(CEN)を高めて、そのアイデアを論理的に整理させます。
年をとるほど気になる記憶力と認知機能の低下についても、本は具体的な話をしています。有酸素運動だけでなく筋トレをあわせておこなうと、脳の老化のスピードを遅らせるのにより役立つという研究が紹介されています。筋肉を使う過程で分泌されるさまざまな物質が、脳の健康ともつながっているという説明です。
ただしこの部分は、特定の病気を予防したり治したりすると言いきるよりも、規則的な筋トレが脳の健康管理に役立ちうる、という程度に受けとめるのが正しいでしょう。無理な高強度の運動よりも、自分の体力に合った軽い筋トレをこつこつ続けることのほうが大切だと、本も強調しています。
今日からまねできる実践法まとめ
本全体をつらぬくメッセージは、結局ひとつです。大げさな運動計画を立てるよりも、いますぐ体を動かすことから始めなさい、ということ。これをもとに実践できることをまとめると、次のとおりです。
- 1日20分のウォーキングから始めてみる
- 階段を上るような、短く強い動きをこまめにはさむ
- できれば午前中に体を動かすルーティンをつくる
- ジムよりも公園や散歩道を使ってみる
- 有酸素運動とあわせて、軽い筋トレもおこなう
私もこの内容を読んでから、大げさな運動計画より、1日6分でも体を動かすほうへと気持ちを切り替えました。脳科学という言葉はむずかしく感じるかもしれませんが、結局は、体を動かせば脳も一緒に動く、というシンプルな真理をあらためて確かめさせてくれる本だと思います。
『運動の脳科学』は、不安や集中力の低下、無気力を感じている人なら、一度は読んでみる価値のある本です。運動を大きな覚悟で始めようとするよりも、今日たった6分でも体を動かしてみることから始めてもらえたらうれしいです。
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