前回は の地点で止まっていました。
4コマで先に見る
マグネシウム、形が道を決める
-
1状況
マグネシウムを飲んでいるのに変わらない…
同じ「マグネシウム300mg」と書かれていても、体に入ってくる量は形によって大きく変わります。
-
2原理
通行証を見せてください
酸化マグネシウムは腸にとどまって水を引き寄せ、クエン酸塩・キレートは溶けて腸の壁を通り抜けます。
-
3実践
形ごとに違う道
酸化物は腸にとどまり、クエン酸塩はよく吸収され、グリシネートは腸への負担が少なめでした。そしてマグネシウムは食べ物にも多く含まれます。
-
4変化
工場のスイッチ、オン!
ATPにくっついて600種以上の酵素を動かすマグネシウム。細胞の一日がまた回りはじめます。
マンガを文章で読む
- 1コマ目・状況 絵バッテリーが空になったまま机にもたれて座る人 ふきだし「マグネシウムを飲んでいるのに変わらない…」
- 2コマ目・原理 絵腸と脳をつなぐ道 ふきだし「通行証を見せてください」
- 3コマ目・実践 絵食卓に並んだ食事 ふきだし「形ごとに違う道」
- 4コマ目・変化 絵ひらめきとともに集中している人 ふきだし「工場のスイッチ、オン!」
📌 この記事の要約
ひとことで答えると: 形によって違います。同じマグネシウムでも、組み合わさった分子によって吸収率が大きく変わり、ある研究では酸化マグネシウムは約4%しか吸収されず、クエン酸マグネシウムはよりよく吸収されました。酸化マグネシウムは吸収が少ないぶん腸にとどまり、緩下剤として使われてきました。グリシネートは腸への負担が少ない形として知られています。マグネシウムは食べ物にも多く含まれ、アメリカ国立衛生研究所はサプリメントでとるマグネシウムの成人の上限を1日350mgと定めています。
- 🔋 マグネシウムは、細胞のエネルギー通貨であるATPにくっついてMg-ATPになってはじめて働きます。マグネシウムを必要とする酵素は600種を超えます(Physiological Reviews、2015)。いわば細胞工場のメインスイッチであり、Nature(2016)は、細胞内のマグネシウムが一日の周期で上下し、エネルギーを使う速さを調節していることを示しました。
- 🚢 同じマグネシウムでも、どんな分子と組み合わされているかによって吸収率は大きく違います。ある研究では酸化マグネシウムの吸収率はわずか約4%で(Magnesium Research、2001)、クエン酸マグネシウムは比較した形のなかで最もよく吸収されました(Magnesium Research、2003)。
- 🧠 マグネシウムL-スレオン酸はラットの脳内マグネシウムを高め、海馬のシナプスを増やし、学習と記憶を改善しました(Neuron、2010)。ただし、ヒトでの研究はまだ規模が小さいのが現状です。
- ⚖️ マグネシウムの補給はインスリン感受性の指標を改善する傾向を示し(ランダム化比較試験のメタ分析、2016)、マグネシウムは肌のトーンに関わるグルタチオンをつくる酵素に欠かせない助っ人でもあります。
- 😴 マグネシウムは脳の興奮の信号をロックし、鎮静の信号を助ける眠りのブレーキです。不眠のある高齢者で寝つくまでの時間を平均約17分縮めたという分析がありますが、エビデンスの質はまだ低いとされています(BMC Complementary Medicine and Therapies、2021)。
💬 こんな経験、ありませんか
「疲れた」が口ぐせになっていたある日、誰かが「マグネシウムを飲んでみたら」とすすめてくれます。薬局の棚の前に立つと、酸化マグネシウム、クエン酸マグネシウム、グリシネート、L-スレオン酸と、名前がずらりと並んでいます。いちばん安くて含有量の多いものを選んでひと月飲んでみたけれど、疲れはそのままで、トイレに行く回数が増えただけ。そこで思うのです。「マグネシウムは、私には合わないのかも」と。
実は、問題はマグネシウムではなく形だった可能性が高いのです。この記事は、その名札ひとつひとつが体の中でどんな道をたどるのかについてのお話です。
🔬 Deep Dive:マグネシウムが細胞に届くまで
1. 細胞工場のメインスイッチ、Mg-ATP
私たちの体のすべての細胞は、ATPというエネルギー通貨で仕事をしています。ところがATPは、それだけではほとんど使われません。マグネシウムイオンがATPにくっついてMg-ATP複合体になってはじめて、酵素がそれを見分けてエネルギーを取り出すのです。マグネシウムは工場の電気そのものというより、電気を機械につなぐメインスイッチに近い存在です。
このスイッチを必要とする酵素は600種を超えます(de Baaijら、Physiological Reviews、2015)。筋肉の収縮と弛緩、神経の信号伝達、DNAの複製やタンパク質の合成まで、すべてがこのスイッチを通ります。
2016年にNatureに掲載された研究は、さらに一歩踏み込みました。ヒトの細胞でも単細胞の藻類でも、細胞内のマグネシウム濃度が一日の周期で上下し、それに合わせて細胞がエネルギーを使う速さやタンパク質をつくる速さも調節されていたのです(Feeneyら、2016)。マグネシウムはスイッチであると同時に、一日のリズムを整える調光器でもあったわけです。
2. 相棒が運命を決める:無機塩・有機塩・キレート
マグネシウムは単独では錠剤に入れられないため、いつも別の分子と組み合わされています。この相棒が、腸での運命を決めます。マグネシウムを積んだ輸送船がどんな船かによって、港(腸の上皮細胞)へのたどり着き方が変わると考えてみてください。
🪨 無機塩(酸化マグネシウムなど):港の外に停泊する貨物船 酸化マグネシウムは一粒あたりのマグネシウム含有量は多いものの、水に溶けにくい性質があります。溶けなかったマグネシウムは腸の壁を通れず、腸の中にとどまって浸透圧で水を引き寄せます。そのため便がやわらかくなり、実際に便秘薬として長く使われてきました。米国の市販製品を比べた研究では、酸化マグネシウムの吸収率は約4%にすぎませんでした(Firoz & Graber、2001)。体に満たす用途としては物足りませんが、腸を動かす用途としては役目を果たします。
🍋 有機塩(クエン酸・グルコン酸・リンゴ酸マグネシウムなど):溶けて港に入っていく船 クエン酸やリンゴ酸といった有機酸と組み合わせたマグネシウムは、水によく溶けます。溶けてイオンになってはじめて腸の上皮細胞の通り道を通れるので、溶ける力こそが吸収の最初の関門です。ランダム化二重盲検試験では、クエン酸マグネシウムは酸化マグネシウムやアミノ酸キレートよりも血中・尿中のマグネシウムを多く高めました(Walkerら、Magnesium Research、2003)。
グルコン酸マグネシウムも、このグループの代表選手です。ブドウ糖からつくられるグルコン酸と組み合わさり、クエン酸マグネシウムと同じように水にとてもよく溶け、胃への刺激や下痢といった緩下作用が比較的少ないため、液体や粉末の製品にもよく使われています。マグネシウムが不足したラットで有機塩と無機塩10種類を比べた安定同位体研究では、グルコン酸マグネシウムの生体利用率が最も高くなりました(Coudrayら、Magnesium Research、2005)。荷物を軽く積んで素早く入港する高速船のようなものです。ただし重さあたりの元素マグネシウム含有量は約5〜6%と低めなので、同じ量を満たすにはより多く摂る必要があり、一度にたくさん摂ればほかの形と同じように便がゆるくなることもあります。
リンゴ酸マグネシウムは、細胞がATPをつくる回路(TCA回路)の材料であるリンゴ酸と組み合わせた形です。そのため「エネルギー用のマグネシウム」と紹介されることが多いのですが、ヒトで疲労を減らすという根拠はまだ不十分です。
🧬 アミノ酸キレート(グリシネート・L-スレオン酸など):通行証を持っているかもしれない船 キレートとは、アミノ酸がマグネシウムをトングのように包み込んだ形です。胃で散らばりにくく、腸への負担が少なく下痢が起きにくいことが利点として挙げられます。この複合体がアミノ酸・ペプチド輸送体(PEPT1など)という別の入り口を使えるのではないかと提案されていますが、ヒトでこの経路が実際にどれほど寄与しているかは、まだ十分に確かめられていません。正直にいえば「通行証を持っているかもしれない船」というところです。
3. 脳の前の検問所を越えるL-スレオン酸
脳は血液脳関門(BBB)という厳しい検問所に囲まれているため、血中のマグネシウムが上がっても、脳内のマグネシウムがすぐについてくるわけではありません。
2010年にNeuronに掲載された研究で、研究チームはさまざまなマグネシウムの形を比べたうえで、マグネシウムL-スレオン酸(MgT)を新たにつくりました。これを摂ったラットは脳脊髄液のマグネシウム濃度が上がり、記憶の中枢である海馬でシナプス密度が増え、学習や短期・長期記憶の課題をよりうまくこなしました(Slutskyら、2010)。研究チームはその鍵として、海馬のNMDA受容体の信号が強まったことを挙げています。NMDA受容体は神経細胞どうしのつながりを強めるかどうかを決める門番で、マグネシウムはふだんこの門をほどよく閉めておく安全ロックの役割を担い、余計な雑音は防ぎながら大切な信号をよりはっきり通します。
ヒトでは、50〜70歳の成人44人を対象にした12週間の研究で認知スコアが改善したという報告があります(Liuら、Journal of Alzheimer’s Disease、2016)。ただし規模が小さく、製造元が支援した研究であるため、より大きな独立した研究が必要です。
4. グルタチオンと肌のトーン:マグネシウムが貸す手
グルタチオンは、細胞が自らつくる代表的な抗酸化物質です。体は三つのアミノ酸を二段階の酵素反応でつなげてグルタチオンをつくりますが、どちらの酵素もMg-ATPをエネルギーとして使います。マグネシウムが足りないと、この組み立てラインのスイッチがゆるんでしまうのです。
肌とのつながりはメラニンにあります。メラニンには暗い褐色のユーメラニンと、明るい黄みがかったフェオメラニンの二つの系統があり、細胞内にグルタチオンやシステインが多いと、つくられる経路が明るい側(フェオメラニン)に傾きます。分かれ道の線路の切り替えポイントを別の線路側に向けておくようなものです。実際に、グルタチオンを4週間摂った人で肌のメラニン指数がわずかに下がったという小規模な臨床研究もあります(Arjinpathana & Asawanonda、2012)。
ここでどうしてもお伝えしておきたいことがあります。マグネシウムのサプリメントで肌が明るくなったという臨床研究は、まだありません。 マグネシウムはグルタチオン工場に欠かせない助っ人ではあっても、美白剤ではありません。不足している人が補えば、抗酸化システムがきちんと回るのを助けるかもしれない。いまの科学が言えるのはそこまでです。
5. インスリンの鍵穴と体脂肪
インスリンが細胞の扉をノックすると、細胞表面のインスリン受容体が内側でチロシンキナーゼという酵素を動かし、「ブドウ糖を取り込め」という信号を送ります。このキナーゼもMg-ATPを燃料にしています。マグネシウムが足りないと、インスリンが鍵を差し込んでも錠前の回りが固くなり、使われなかった血糖は結局脂肪として蓄えられやすくなります。
18件のランダム化比較試験をまとめたメタ分析では、マグネシウムの補給は空腹時血糖を下げ、糖尿病のリスクがある人ではインスリン感受性の指標を改善しました(Simental-Mendíaら、Pharmacological Research、2016)。とはいえ、マグネシウムがやせさせてくれるわけではありません。足りなかったスイッチを元の位置に戻し、代謝が正常に回るよう助けること。それがマグネシウムがダイエットに差し出せる、正直な役割です。
6. 😴 眠りのブレーキを踏んでくれる手:睡眠と神経の安定
一日を終えて横になっても、頭の中がなかなか静まらない夜があります。体は疲れているのに考えは走りつづけ、脚はなんとなくこわばっている。眠りにつくには、脳と体がアクセルから足を離してブレーキを踏む必要がありますが、マグネシウムはこの過程のいくつもの地点に手を添えています。
🧠 ブレーキペダル:GABA受容体を助ける
脳の中では、神経細胞を興奮させるグルタミン酸と、落ち着かせるGABAが、いつも天秤の両側に乗っています。眠りにつく頃には、この天秤がGABAの側に傾く必要があります。
マグネシウムを実際の食事とどう組み合わせるか知りたいなら、連休明けのカーニボア食にマグネシウム補給を加えたカーニボア食とマグネシウム補給ガイドを参考にしてください。
マグネシウムはこの天秤を両側から動かします。一方では、グルタミン酸が出入りするNMDA受容体の門に安全ロックのようにかかり、興奮の信号が漏れ出さないよう防ぎます。もう一方では、GABA-A受容体がGABAによりよく反応するよう手助けし、神経細胞が静かに扉を閉じられるようにします。実験室の研究では、マグネシウムイオンがGABA-A受容体の反応を高めるという結果が報告されています(Möykkynenら、NeuroReport、2001)。アクセルはロックし、ブレーキペダルは踏みやすくする。これがマグネシウムが神経を落ち着かせる一つ目のしくみです。
🚨 警報の音量:コルチゾールとストレスの軸
マグネシウムが不足したえさを食べたラットでは不安行動が増え、ストレスホルモンであるコルチゾール系を放出する軸(視床下部-下垂体-副腎)が過剰に活性化していました(Sartoriら、Neuropharmacology、2012)。逆にストレスは尿からマグネシウムをより多く失わせるため、「ストレス → マグネシウム不足 → さらに過敏になる」という悪循環が生まれることがあります。
ヒトでは、血中マグネシウムが低くストレスの強い成人264人が8週間マグネシウム(ビタミンB6を併用したグループを含む)を摂ったあと、ストレスの点数が下がったという研究があります(Pouteauら、PLoS One、2018)。ただしプラセボ群のない研究なので、解釈には限界があります。
🌙 夜の信号機:メラトニン
メラトニンは、脳の中央にある松果体から暗くなると分泌され、「もう眠る時間だよ」という信号機を灯すホルモンです。マグネシウムが不足したえさを食べたラットでは血中メラトニンが低下し(Billyardら、Magnesium Research、2006)、後で紹介する不眠の高齢者の研究では、マグネシウムの補給後にメラトニンが増えました。メラトニンはセロトニンを原料にいくつもの酵素の段階を経てつくられますが、この過程や松果体の細胞の信号伝達にマグネシウムが関わっていると考えられています。ただし、どの段階にどれほど寄与しているのかは、まだ研究が進められているところです。
ここにNature(2016)の発見が重なります。細胞内のマグネシウムそのものが一日の周期で上下し、細胞の時計を合わせるメトロノームのように働いています。マグネシウムは眠りのブレーキであると同時に、一日のリズムの拍子を守る手でもあるのです。
💪 筋肉のスイッチ:カルシウムが入れて、マグネシウムが切る
筋肉が縮むときはカルシウムが入れるスイッチ、ふたたびゆるむときはマグネシウムが切るスイッチの役割を果たします。マグネシウムは神経や筋肉の細胞でカルシウムと席を争い、カルシウムの通り道を落ち着かせます。縮んだ筋肉がふたたびゆるむのに必要なカルシウムポンプも、Mg-ATPで動いています。マグネシウムが不足すると神経や筋肉が興奮しやすくなり、ふるえやけいれんが起こりうるのはこのためです。体の緊張がほどけてこそ、脳も眠りの敷居をまたぎやすくなります。
では、夜に脚がつるのもマグネシウムで防げるのでしょうか。正直にいえば、結果は分かれています。ランダム化比較試験をまとめたコクラン・システマティックレビューは、原因のわからない筋けいれんがある高齢者には、マグネシウムが意味のある予防効果をもたらすとは考えにくいと結論づけ、妊娠中の脚のけいれんについては研究によって結果が異なっていました(Garrisonら、Cochrane Database of Systematic Reviews、2020)。本当にマグネシウムが不足している人には役立つかもしれませんが、脚がよくつるなら、脱水や服用中の薬、血行の問題といったほかの原因もあわせて確かめるとよいでしょう。
📈 ヒトではどれほど効果があったのか
不眠のある高齢者46人に8週間、毎日マグネシウム500mg(この研究では酸化マグネシウムの形)を与えたランダム化二重盲検試験では、プラセボ群に比べて不眠の点数や睡眠効率、寝つくまでの時間が改善し、血中のメラトニンは増え、コルチゾールは減りました(Abbasiら、Journal of Research in Medical Sciences、2012)。こうした研究3件をまとめたシステマティックレビューでは、マグネシウムを摂った高齢者はプラセボより平均約17分早く眠りにつきました(Mah & Pitre、BMC Complementary Medicine and Therapies、2021)。ただし研究者たちはエビデンスの質を低いと評価しており、500mgは研究の管理下で使われた用量で、一般的なサプリメントの上限(350mg)を超えている点も覚えておいてください。
🌿 なぜビスグリシネートは「眠りのマグネシウム」と呼ばれるのか
マグネシウムビスグリシネートは、一つのマグネシウムをアミノ酸グリシン二つが包み込んだ形です。「眠りのマグネシウム」と呼ばれるのには、三つの理由があります。
- 腸が静かなほうです。下痢のような腸への負担が少ない形として知られています。逆に酸化マグネシウムは、腸にとどまって水を引き寄せる形です。
- 相棒のグリシンも眠りを助けます。グリシンは脳幹や脊髄で神経を落ち着かせる抑制性の神経伝達物質です。寝る前にグリシンを3g摂った人たちは、主観的な睡眠の質がよくなり、翌日の疲労感が減りました(Yamaderaら、Sleep and Biological Rhythms、2007)。動物研究では、グリシンが体内時計の中枢である視交叉上核に働きかけて手足の血管を広げ、深部体温を下げることで眠りやすい状態をつくるしくみが明らかになっています(Kawaiら、Neuropsychopharmacology、2015)。
- 敏感な神経に二重に働きかけます。マグネシウムがGABA側のブレーキを助け、グリシンがもう一つの鎮静の回路をオンにするわけです。二つの成分が別々の鎮静の回路に届くことが、この形が注目される理由です。
ただし、元素マグネシウム200mgのビスグリシネートに含まれるグリシンは約1.2gで、研究で使われた3gより少なめです。グリシンの効果は「おまけ」程度に考え、腸への負担が少ない形であることをいちばんの特徴と見るほうが正確です。眠りへの効果をほかのマグネシウムの形と直接比べたヒトの研究は、まだ多くありません。
マグネシウムは眠りを無理やり引き寄せる睡眠薬ではなく、足りなくなっていたブレーキ液を補うものに近い存在です。眠れない夜が3か月以上続くなら、サプリメントより先に睡眠の専門医に相談してください。
✅ 解決策:マグネシウムを知って選ぶ3ステップ
- 🥬 ステップ1:まずはお皿から満たす。 成人の推奨量は一日あたり男性で約360〜420mg、女性で約280〜320mgです(国ごとの基準によって少しずつ異なります)。ほうれん草などの青菜、かぼちゃの種やアーモンドなどのナッツ・種子類、豆類、玄米、カカオ含有量の高いダークチョコレートがよい供給源です。食事からのマグネシウムは、摂りすぎの心配がほとんどありません。
- 🎯 ステップ2:形ごとの特徴を知っておく。 研究では、酸化マグネシウムは吸収率が低く緩下剤として使われてきました。クエン酸マグネシウムは比べた中でいちばんよく吸収され、グルコン酸マグネシウムはラットの比較で生体利用率が高くなっていました。グリシネートは腸への負担が少ない形として、L-スレオン酸は記憶力の研究が進行中の形として知られています。製品のラベルには、化合物全体の重さと「元素マグネシウム(elemental magnesium)」の含有量が別に書かれています。
- 🩺 ステップ3:サプリメントは専門家に相談する。 アメリカ国立衛生研究所は、サプリメントでとるマグネシウムの成人の耐容上限量を一日350mgと定めています。マグネシウムはカルシウムや鉄のサプリメント、一部の抗生物質と吸収を妨げ合うことがあるので、薬を飲んでいる方や腎臓の病気がある方は、まず薬剤師や医師に確かめるのが安全です。
🌙 眠りのためにマグネシウムを考えているなら
上の研究に共通しているのは、マグネシウムは睡眠習慣そのものの代わりにはならないということです。寝る1時間前に照明を落とす、画面から離れる、カフェインは午後の早い時間までといった習慣が先です。
📊 マグネシウムの形別ひと目でわかる比較
| 形 | 分類 | 吸収率 | 腸への負担 | 睡眠に関する根拠 | 研究・使われ方でわかっていること |
|---|---|---|---|---|---|
| 酸化マグネシウム | 無機塩 | 低い(ある研究で約4%) | 高い(緩下作用) | 不眠の高齢者の研究(2012)で使われましたが、緩下作用があります | 主に緩下剤として使われてきました |
| クエン酸マグネシウム | 有機塩 | 高い | 中程度 | 睡眠への効果を個別に見た研究は少ないです | 比較研究でいちばんよく吸収されました |
| グルコン酸マグネシウム | 有機塩 | 高い(ラット10種比較で最上位) | 低め | 睡眠への効果を個別に見た研究は少ないです | 液体製品によく使われ、元素含有量は低めです |
| リンゴ酸マグネシウム | 有機塩 | 比較的高い(主に動物研究) | 中程度 | 睡眠の根拠は不十分です | 疲労改善の根拠はまだ不十分です |
| グリシネート(ビスグリシネート) | アミノ酸キレート | 比較的高い | 低い | 含まれるグリシンが睡眠研究(3g)で使われました | 腸への負担が少ない形として知られています |
| L-スレオン酸 | 有機複合体 | 脳への到達を研究中 | 低い | 小規模な研究が進行中です | ラットの記憶研究(Neuron、2010)があり、元素含有量は低めです |
結論
「マグネシウムを飲んでみたら」と言われて薬局の棚の前で迷った理由は、実はマグネシウムではなく形の問題でした。研究が示したのは、組み合わさった分子によって吸収率と使いみちが変わるということでした。酸化マグネシウムは吸収が少なく腸にとどまり、クエン酸・グルコン酸は吸収が高めで、グリシネートは腸への負担が少ない形でした。そしてマグネシウムは食べ物にも多く含まれています。今日の買い物で、ほうれん草とかぼちゃの種からかごに入れてみてください。
🙋 よくある質問
Q1. マグネシウムは飲む時間によって吸収が変わりますか?
時間帯によって吸収が大きく変わるという根拠は多くありません。ただ、前に見たように形によって腸への負担が違い、カルシウムや鉄のサプリメント、一部の抗生物質とは吸収を妨げ合うことがあります。飲む時間と量は、飲んでいる薬や健康状態によって変わるので、薬剤師や医師に相談するのが安全です。
Q2. たくさん飲めばもっとよいのでは?副作用はありませんか?
マグネシウムは、多ければ多いほどよい栄養素ではありません。サプリメントで上限量(一日350mg)を超えると、下痢や腹痛、吐き気が起こりやすくなります。とくに腎臓の機能が低下している方はマグネシウムをうまく排出できず、血中濃度が危険なほど上がることがあるため、必ず医師に相談してから飲んでください。血圧の薬、利尿薬、骨粗しょう症の薬、抗生物質を服用中の方は、薬剤師に飲み合わせを確認するとよいでしょう。
📚 参考文献
- de Baaij, J. H. F., Hoenderop, J. G. J., & Bindels, R. J. M. (2015). Magnesium in man: implications for health and disease. Physiological Reviews, 95(1), 1–46. doi:10.1152/physrev.00012.2014
- Feeney, K. A., Hansen, L. L., Putker, M., … O’Neill, J. S., & van Ooijen, G. (2016). Daily magnesium fluxes regulate cellular timekeeping and energy balance. Nature, 532(7599), 375–379. doi:10.1038/nature17407
- Slutsky, I., Abumaria, N., Wu, L.-J., … Liu, G. (2010). Enhancement of learning and memory by elevating brain magnesium. Neuron, 65(2), 165–177. doi:10.1016/j.neuron.2009.12.026
- Liu, G., Weinger, J. G., Lu, Z.-L., Xue, F., & Sadeghpour, S. (2016). Efficacy and safety of MMFS-01, a synapse density enhancer, for treating cognitive impairment in older adults. Journal of Alzheimer’s Disease, 49(4), 971–990.
- Firoz, M., & Graber, M. (2001). Bioavailability of US commercial magnesium preparations. Magnesium Research, 14(4), 257–262.
- Walker, A. F., Marakis, G., Christie, S., & Byng, M. (2003). Mg citrate found more bioavailable than other Mg preparations in a randomised, double-blind study. Magnesium Research, 16(3), 183–191.
- Coudray, C., Rambeau, M., Feillet-Coudray, C., … Mazur, A. (2005). Study of magnesium bioavailability from ten organic and inorganic Mg salts in Mg-depleted rats using a stable isotope approach. Magnesium Research, 18(4), 215–223.
- Simental-Mendía, L. E., Sahebkar, A., Rodríguez-Morán, M., & Guerrero-Romero, F. (2016). A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials on the effects of magnesium supplementation on insulin sensitivity and glucose control. Pharmacological Research, 111, 272–282. doi:10.1016/j.phrs.2016.06.019
- Arjinpathana, N., & Asawanonda, P. (2012). Glutathione as an oral whitening agent: a randomized, double-blind, placebo-controlled study. Journal of Dermatological Treatment, 23(2), 97–102. doi:10.3109/09546631003801619
- Abbasi, B., Kimiagar, M., Sadeghniiat, K., Shirazi, M. M., Hedayati, M., & Rashidkhani, B. (2012). The effect of magnesium supplementation on primary insomnia in elderly: a double-blind placebo-controlled clinical trial. Journal of Research in Medical Sciences, 17(12), 1161–1169.
- Mah, J., & Pitre, T. (2021). Oral magnesium supplementation for insomnia in older adults: a systematic review & meta-analysis. BMC Complementary Medicine and Therapies, 21, 125. doi:10.1186/s12906-021-03297-z
- Yamadera, W., Inagawa, K., Chiba, S., Bannai, M., Takahashi, M., & Nakayama, K. (2007). Glycine ingestion improves subjective sleep quality in human volunteers, correlating with polysomnographic changes. Sleep and Biological Rhythms, 5(2), 126–131. doi:10.1111/j.1479-8425.2007.00262.x
- Möykkynen, T., Uusi-Oukari, M., Heikkilä, J., Lovinger, D. M., Lüddens, H., & Korpi, E. R. (2001). Magnesium potentiation of the function of native and recombinant GABA(A) receptors. NeuroReport, 12(10), 2175–2179. doi:10.1097/00001756-200107200-00026
- Sartori, S. B., Whittle, N., Hetzenauer, A., & Singewald, N. (2012). Magnesium deficiency induces anxiety and HPA axis dysregulation: modulation by therapeutic drug treatment. Neuropharmacology, 62(1), 304–312. doi:10.1016/j.neuropharm.2011.07.027
- Pouteau, E., Kabir-Ahmadi, M., Noah, L., … Dubray, C. (2018). Superiority of magnesium and vitamin B6 over magnesium alone on severe stress in healthy adults with low magnesemia: a randomized, single-blind clinical trial. PLoS One, 13(12), e0208454. doi:10.1371/journal.pone.0208454
- Billyard, A. J., Eggett, D. L., & Franz, K. B. (2006). Dietary magnesium deficiency decreases plasma melatonin in rats. Magnesium Research, 19(3), 157–161.
- Garrison, S. R., Korownyk, C. S., Kolber, M. R., … Allan, G. M. (2020). Magnesium for skeletal muscle cramps. Cochrane Database of Systematic Reviews, 9, CD009402.
- Kawai, N., Sakai, N., Okuro, M., … Nishino, S. (2015). The sleep-promoting and hypothermic effects of glycine are mediated by NMDA receptors in the suprachiasmatic nucleus. Neuropsychopharmacology, 40(6), 1405–1416. doi:10.1038/npp.2014.326
💭 あなたに聞いてみたいこと
いま家にあるマグネシウム製品のラベルを、一度取り出して見てみてください。どんな名札がついていますか?そして、あなたがマグネシウムを探すようになった理由は疲れでしたか、眠りでしたか、それとも別の何かでしたか?お問い合わせページで聞かせていただければ、次の記事で一緒にひもといていきます。
⚠️ 免責事項
この記事は学術研究にもとづく一般的な健康情報であり、医学的な診断や治療に代わるものではありません。紹介した研究の一部は動物実験や小規模なヒト研究であり、マグネシウムの補給が肌の美白や体重減少を直接もたらすという根拠はまだありません。腎臓の病気がある方、妊娠中・授乳中の方、服用中の薬がある方は、サプリメントを始める前に医師や薬剤師にまずご相談ください。
情報の基準日:。その後の新しい研究により内容が変わる可能性があります。
この記事は役に立ちましたか?
選択はこのブラウザにのみ保存され、どこにも送信されません。