血糖は正常なのに脳は老ける?…インスリン抵抗性セルフチェックのサイン

最近、健康に関する記事を読んでいると、やけによく出てくる言葉があります。それがインスリン抵抗性です。糖尿病の話かと思いきや、よく見ると認知症と並んで語られることが多く、少しなじみにくく感じるかもしれません。

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血糖が正常でも脳は老ける?

  1. 1問題

    ひとしずくの血液と血糖測定器

    血糖は正常なのに?

    糖尿病と診断されていなくても、安心できないサインがあります。

  2. 2しくみ

    脳の上から芽が出てくる図

    脳もインスリンを使う

    インスリン抵抗性は脳、とくに海馬の働きを落とし、「3型糖尿病」と呼ばれます。

  3. 3実践

    バーベルを持ち上げる人

    ウォーキングに筋トレを

    歩くだけでは足りないことも。筋トレとバランス運動を一緒に。

  4. 4変化

    穏やかな波が流れる脳と、ゆっくり打つ心臓

    サインをチェック

    食後のひどい眠気・疲れ、増えていくウエストといったサインがあれば受診を。

アルツハイマーは実は、脳にできた 糖尿病かもしれないという話

最近、健康に関する記事を読んでいると、やけによく出てくる言葉があります。それがインスリン抵抗性です。糖尿病の話かと思いきや、よく見ると認知症と並んで語られることが多く、少しなじみにくく感じるかもしれません。

実際、最近の健康記事では「糖尿病と診断されていなくても安心はできない」という表現がくり返し登場します。血糖値が正常範囲だからといってインスリン抵抗性がないわけではなく、この抵抗性が脳の健康とも無関係ではないという研究が次々と出ているからです。

今日は、インスリンがなぜ血糖の調節をこえて脳とも関係しているのか、インスリン抵抗性が認知症のリスクにどんな影響を与えうるのか、そして日常で自分でチェックできるサインは何かを、ひとつずつ解きほぐしていきます。

脳もインスリンを使っているという事実

インスリンはふつう血糖を下げるホルモンとしてだけ知られていますが、じつは脳の中でも重要な役割を果たしています。記憶を担う海馬をはじめ、さまざまな脳の部位にインスリン受容体があり、この受容体が正常にシグナルを受けとってこそ、神経細胞がエネルギーをきちんと使い、記憶をつくる過程もスムーズに進みます。

ところがインスリン抵抗性が生じると、このシグナル伝達が鈍くなります。全身の血糖調節が難しくなるのと同じように、脳の中でも神経細胞がインスリンのシグナルにうまく反応できない状態になりうる、というのが多くの研究者が注目している点です。そのため、インスリン抵抗性を単なる糖尿病の前段階とだけ見るのではなく、脳の健康にもつながる問題として見る考え方が、だんだん広がっています。

認知症が「3型糖尿病」と呼ばれる理由

最近の記事で、認知症を3型糖尿病と表現しているのを見たことがある人もいるでしょう。ただし、これは正式な疾患分類ではなく、アルツハイマー病にみられるさまざまな代謝の異常を説明するために研究者が使っている表現だ、ということをまず押さえておきたいと思います。アルツハイマー病を糖尿病とまったく同じ病気とみなす考え方でもありません。

それでも、こうした表現が生まれた背景はあります。脳のインスリン抵抗性、代謝の異常、慢性炎症といった要素が、認知機能の低下とともにあらわれることが多いという仮説があるからです。2024年に発表されたランセット認知症委員会の報告書でも、代謝的な要因と生活習慣の要因が認知症のリスク要因としてあわせて扱われ、認知症を脳だけの問題とせまく見ない流れがはっきりしてきています。

インスリン抵抗性が脳の中で引き起こすこと

もう少し具体的に見ると、脳のインスリン抵抗性はタウタンパク質のリン酸化に影響を与えうると説明されています。タウタンパク質はアルツハイマー病の特徴的な病理のひとつとされる物質で、認知機能の低下や病気の重さとも密接に関係していることが知られています。

さらにインスリン抵抗性は、血管の健康ともつながっています。血管の機能が落ちると、脳への血流、つまり灌流が減ることがあり、脳細胞が必要な酸素や栄養を十分に受けとれない状況につながりえます。慢性炎症もこの過程に一緒にかかわっていると説明されていて、結局ひとつの原因ではなく、いくつもの要素が重なって脳の健康を揺るがしているわけです。

糖尿病と診断されていなくても安心できない理由

ここで多くの人が見落としている点があります。インスリン抵抗性は、糖尿病と診断された人だけの話ではない、ということです。空腹時血糖異常や糖尿病予備群のように、まだ糖尿病と診断されていない段階でも、インスリン抵抗性はすでに進んでいることがあります。

代謝性炎症という考え方もあわせて押さえておく価値があります。腹部肥満、睡眠不足、頻繁な飲酒や夜食、ストレスが重なると、体の中で慢性的な低いレベルの炎症が起こり、これがインスリン抵抗性と血管機能の異常を同時に進めうるという説明です。ですから、健康診断で血糖値が正常だったからといって完全に安心するより、こうした代謝のサインを総合的に見ていくことが必要です。

インスリン抵抗性、こんなサインがあればチェックを

インスリン抵抗性は、はっきりした症状があらわれないことが多く、自分で気づくのは簡単ではありません。それでも、参考にできるサインがいくつかあります。食後にやけに眠くなってひどい疲れが押し寄せる、ウエストやお腹まわりがどんどん大きくなる、健康診断で空腹時血糖や中性脂肪の値が境界線にかかる、といったものが代表的です。

✓ 食事の直後にひどい眠気と疲労感がくり返される

✓ ウエスト・お腹の脂肪が少しずつ増えている

✓ 空腹時血糖や中性脂肪が正常の上限に近い

✓ 家族に糖尿病の人がいる

これらのうちいくつもあてはまるなら、自分で診断をくだすよりも、健康診断で関連する数値をもう少しくわしく確認し、必要なら病院で相談してみることをおすすめします。

薬で抵抗性を改善しようとする試み

医療の分野でも、インスリン抵抗性を改善して脳を守れるかどうかについての研究がさかんです。メトホルミンやSGLT-2阻害薬、GLP-1系の薬のように、インスリン抵抗性を改善してすい臓の負担を軽くする薬について、脳を守る効果にまで研究の範囲が広がっているという記事が最近出てきています。

ただし、まだ慎重になるべき部分もあります。アルツハイマー病を対象とした第3相臨床試験では、バイオマーカーの改善と実際の臨床効果が食い違う結果も報告されていて、確かな治療効果と言いきるのは早すぎます。また、絶食や感染症、重い急性疾患のときには、関連する薬がケトアシドーシスのようなリスクを高めうることもあわせて指摘されているので、服用するかどうかは必ず担当の医療者と相談して決めるのが安全です。

生活習慣で抵抗性を下げる方法

薬の話とは別に、生活習慣を見直すことがもっとも基本的で確実な方法とされています。最近のある健康講演では、筋肉を使う習慣がインスリン抵抗性の改善に大切だと強調し、規則的な運動を多くの慢性疾患の予防に役立つ最高の方法だと表現していました。歩くだけでは足りないこともあり、筋トレとバランス運動を一緒に取り入れるのが効果的だという説明です。

食習慣の面では、糖分の摂取を減らすことが役立つという研究もあります。幼いころに砂糖の摂取を減らした人は、大人になってからの認知症のリスクが低かったという研究結果が出て、砂糖がインスリン抵抗性や神経炎症、酸化ストレスを通じて脳の健康に影響しうるという説明もあわせて示されました。ここに十分な睡眠とストレス管理まで加われば、インスリン抵抗性を下げるのにずっと有利な環境ができます。

結局、インスリン抵抗性は糖尿病だけの問題ではなく、脳の健康にもかかわるサインとして見るべきなのでしょう。大がかりな治療よりも、いますぐ食習慣と運動、睡眠を少しずつ見直すことこそが、実質的な予防のはじまりになりえます。今日ご紹介したチェック項目を参考に、ご自分の生活習慣を一度ふり返ってみてください。

認知症予防とインスリン抵抗性の話、一緒に読んでほしい家族にシェアしたり、あとで読み返せるよう保存したりしてみてください。

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