何年も解けなかったセラミックの難題、ソウル大学の教授が3週間で解けた理由とは?

何年取り組んでも、手がかりさえ見えない問題があります。もし、その問題をたった3週間で解いた人がいたら、それも特別な装置や助けなしに、ただ考え方を変えただけで解いたとしたら、信じられますか。

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何年もの難題を3週間で

  1. 1問題

    机の前で浅く息をする人と、頭上で鳴る警報ベル

    何年も足踏み…

    研究者たちが何年取り組んでも解けなかった、セラミック工学の壁がありました。

  2. 2しくみ

    考えにふける人の上で灯る電球

    考えを手放さない

    没入的思考:ひとつの問題を長く途切れずにつかむと、脳が答えを見つけ出します。

  3. 3実践

    開いた本とペン

    一日じゅうひとつの問題

    あきらめるかわりに、ひとつの問題だけを考える時間をこつこつ増やしていきます。

  4. 4変化

    一段ずつ上る階段と、てっぺんの旗

    3週間で出た答え

    特別な装置ではなく、考え方を変えた結果でした。

何年取り組んでも、手がかりさえ見えない問題があります。もし、その問題をたった3週間で解いた人がいたら、それも特別な装置や助けなしに、ただ考え方を変えただけで解いたとしたら、信じられますか。ソウル大学の教授の実話なのですが、のぞいてみると、誰でも一度は試してみる価値のある原理が隠れています。

何年もかかるはずの問題が、3週間で解けた

この話の主人公は、ソウル大学材料工学部に長く在籍したファン・ノンムン教授です。セラミック素材を研究する工学者だった彼は、あるとき自分なりの問題解決法を見つけ、のちにその経験を本にまとめて、韓国で大きな話題になりました。数十万部が売れたロングセラー『没入(몰입)』です。自己啓発書というより、実際の研究の現場で確かめられた思考法に近いという点が、この本を特別なものにしました。

多くの人は没入という言葉を、ちょっとした集中力くらいに軽く考えていますが、彼の言う没入は、もっと深く、持続的な状態を指します。ひとつの問題を何日も何週間も頭の中から手放さず、ずっとつかみつづけている状態です。この方法で彼は、長いあいだ解けなかったセラミック工学の難題を解決したと伝えられています。

いったいどんな問題で、どんな過程を経て解けたのかを、順番に見ていきましょう。結果だけ見るとすごいことに思えますが、その中には誰でも試せる具体的な方法がつまっています。

一生解けそうになかった、セラミック工学の壁

彼が研究者として活動していたころ、セラミック新素材に関するひとつの課題が、ずっと足を引っぱっていたといいます。理論的には可能に見えるのに、実際の実験では望んだ結果が出ない、典型的に研究者を疲れさせるタイプの問題でした。論文や資料をいくら探しても似た事例すら見つからず、時間がたつほど、これは無理な問題なのではないかという思いまで浮かんだそうです。

ふつう、こうした状況になると、研究者は問題をいったん脇に置くか、ほかの課題へ目を移すことが多いものです。費やした時間に比べて成果が出なければ、組織の中でのプレッシャーも大きくなるからです。ところが彼は、別の選択をしました。問題を避けずに、むしろもっと深く掘り下げることにしたのです。

研究者たちを何年も足止めした理由

セラミック工学の分野の難題がとくに時間がかかるのは、変数そのものが多いからです。素材のわずかな組成の違い、温度、圧力、工程の順番まで、ひとつひとつが結果に影響するので、実験だけで答えを見つけるのは簡単ではありません。理論と実際のあいだのすき間を埋めるには、結局、人の思考力でそのすき間をせばめなければならないのですが、それが言うほど簡単ではない、というのが問題でした。

短く集中して考えれば解ける、というレベルではなかったのです。1日2日じっくり考えて手がかりがつかめる問題なら、とっくにほかの研究者も解いていたでしょう。それだけ長い時間、途切れない思考が必要な問題だったということでもあります。

あきらめるかわりに選んだのは「没入」だった

彼が選んだ方法はシンプルでした。その問題ひとつだけを考える時間を、意図的に増やすことでした。ほかの雑念や日々の悩みをできるだけ取りのぞき、起きているあいだはずっとその問題に戻ってくるよう、自分を訓練したといいます。最初の数日はこれといった進展がありませんでしたが、時間が積み重なるにつれて、問題を見る視野そのものが少しずつ変わりはじめたと伝えられています。

この方法が特別なのは、「一生懸命」ではなく、「長く、途切れずに」考えたという点です。あせって急いで答えを探すよりも、ゆっくりと同じ問題をかみしめつづけるほうを選んだのです。のちに彼はこの考え方に「没入的思考」という名前をつけ、訓練によって誰でもこの状態にたどり着けると説明しています。

3週間でやってきた答え、そして人生の転機

そうしてひとつの問題だけに打ちこんで約3週間がたったころ、それまで見えなかった解決の手がかりが、突然ひらめいたと伝えられています。何年もつかみつづけて解けなかった問題が、密度の濃い3週間の思考のすえに解けたのです。本人でさえ、この経験がどれほど強烈だったかを、そのあと長いあいだかみしめていたそうです。

この経験は、研究者としての人生だけでなく、その後の進路にも影響を与えました。彼はこの問題解決の過程で得た気づきを理論としてまとめたくなり、のちにソウル大学の教授として在職しながら、この思考法を学生や一般の人たちに伝えることに力を注ぎはじめました。

没入の伝道師になったソウル大学の教授

彼が書いた『没入』は、出版以来、自己啓発書のコーナーでずっと名前があがるロングセラーになりました。単なるモチベーション系の話ではなく、実際の工学の問題を解いた経験にもとづく思考の訓練法である点が、ほかの自己啓発書とは趣が違うと評価されました。受験生から会社員、研究者まで、幅広い読者から反響を得た理由でもあります。

その後、彼はいくつもの講演やインタビューを通して、没入的思考法を紹介してきました。核心は、才能や特別な環境ではなく、ひとつの問題に思考を持続的に貼りつけておく訓練だけで、誰でも似た経験ができるということです。この点が、多くの人にとってなぐさめであり、モチベーションにもなったようです。

自分も没入を練習できる?

彼の話を読むと、自分もあんなふうになれるだろうか、という疑問がわいてくるものです。彼が強調するやり方は、大げさなものではありません。ひとつの問題や目標を決めて、すきま時間ができるたびにその考えへ戻ってくる習慣をつけることから始めればいいのです。スマホを見たり、ほかの考えにそれたりする時間を減らし、その場所を、もともと悩んでいた問題で満たすというやり方です。

はじめは数分の集中もむずかしいかもしれません。けれども、この状態を何日も何週間も続けていくと、あるとき考えがひとりでにその問題へ向かうときが来るといいます。それこそが、彼の言う没入状態の始まりなのです。

すぐにセラミック工学のような大きな問題でなくてもかまいません。試験の準備、仕事の企画、進路の悩みのような日々の問題にも、同じ原理を当てはめてみることができます。大切なのは「短く濃く」ではなく、長く、途切れずにつかみつづける力だということを、彼の例が示しています。

何年取り組んでも解けなかった問題を3週間で解いた話は、結局、答えは才能よりも、どれだけ長くつかみつづけていたかに近いということを教えてくれます。いま解けない悩みがあるなら、しばらく遠くから眺めるかわりに、一度しっかりつかんでみるのもひとつの方法かもしれません。

ファン・ノンムン教授の没入の話が役に立ったなら、次回は具体的な没入の方法について見ていきましょう。

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