前回は の地点で止まっていました。
4コマで先に見る
三日坊主はアイデンティティの問題
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1問題
うなだれた疲れた人と、ほとんど空になった電池 3日であきらめた…
ダイエットも貯金も三日坊主。私たちはそれを意志の弱さと呼びます。
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2しくみ
考えにふける人の上で灯る電球 自分らしい行動?
心理学者オイサーマンの理論:アイデンティティと行動がずれると、あきらめやすくなります。
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3実践
人の口から出た吹き出し つらいのは大切だから
困難を「自分には合わない」ではなく、「大切だからつらい」と解釈します。
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4変化
一段ずつ上る階段と、てっぺんの旗 自分らしく長く
戦略を自分らしく組めば、行動は長続きします。
ダイエットを始めて3日であきらめたなら、その理由を意志の弱さのせいにしがちです。けれども心理学には、この失敗をまったく違うふうに説明する理論があります。アメリカの心理学者ダフナ・オイサーマンが提唱した「アイデンティティにもとづく動機づけ(Identity-Based Motivation, IBM)」理論です。
あきらめた本当の原因は意志ではなく、「自分らしくなかった」からだった
この理論は、人がある目標に向かって動くとき、その目標が自分の思う自分の姿とどれだけ一致しているかが成否を分けると説明します。ダイエットや貯金、勉強のような目標がくずれつづけるのも、意志力が足りないからではなく、その行動が「自分らしい」と感じられないからだ、というのです。
実際に多くの人が、新年になると似たような決意をくり返し、似たような時期にあきらめます。アイデンティティにもとづく動機づけの理論は、このくり返されるパターンを個人の弱さではなく、アイデンティティと行動のずれという構造的な問題として見ます。今日は、この理論が実際に何を言っているのか、日々の暮らしにどう生かせるのかを、じっくりひもといてみましょう。
ダフナ・オイサーマンとはどんな学者?
ダフナ・オイサーマンは、アメリカの南カリフォルニア大学(USC)で心理学と教育学をあわせて研究してきた学者として知られています。動機づけと自己調整、社会的認知の分野で長く研究を続け、人はなぜある目標は最後までやりとげ、ある目標はあっさり手放してしまうのかを掘り下げてきました。
彼女が提唱したアイデンティティにもとづく動機づけの理論は、学界だけでなく教育の現場でも幅広く活用されているといいます。生徒の学習意欲を引き上げるプログラムや、若者の進路設計を助ける介入プログラムに、この理論の原理が取り入れられた例がよく紹介されています。
むずかしい心理学の用語のように聞こえますが、核心はシンプルです。人は「自分はどんな人間か」という感覚をもとに行動を選び、その行動が自己イメージに合わなければ、どんなによい目標でも長く続けられない、ということです。
アイデンティティと行動がずれると起きること
たとえば、ふだん運動とは縁のなかった人が、突然毎朝の早朝ランニングを決意したとしましょう。最初の数日は意志でもちこたえられますが、時間がたつにつれて、「自分はもともとこういう人間じゃないのに」という違和感がじわじわとわき上がってきます。
アイデンティティにもとづく動機づけの理論によれば、まさにこの地点からあきらめが始まります。目標そのものが悪いのではなく、その目標を達成するための行動が、自分の思うアイデンティティとぶつかるので、動機が急激に下がる、という説明です。
反対に、ふだんから「自分は毎日少しでも体を動かす人間だ」という自己認識をもつ人は、同じランニングを始めても、ずっと長く続ける傾向があります。行動よりも先に、アイデンティティが根づいているからです。
つらい瞬間をどう解釈するかが違う
この理論でとくに興味深いのは、困難をどう解釈するかという部分です。目標に向かう途中で、誰でもつらい瞬間に出会いますが、そのつらさの解釈は二手に分かれる、とオイサーマンは説明します。
ひとつは「こんなにつらいということは、本当に大切なことをしているんだ」と受けとめるやり方、もうひとつは「こんなにつらいということは、自分には合わないことなんだ」と受けとめるやり方です。同じ困難でも、解釈しだいでまったく違う結果につながります。
前者のように解釈する人は、困難を目標に近づいているサインと受けとめて、むしろ動機が強くなりますが、後者のように解釈する人は、その瞬間にあきらめのボタンを押してしまいます。ダイエット中に停滞期にぶつかったときや、勉強しても成績が上がらないときも同じです。
戦略も自分らしく組まないと長続きしない
アイデンティティにもとづく動機づけの理論が強調するもうひとつの柱は、戦略とアイデンティティの一致です。同じ目標でも、その目標を達成する方法が自分の性格に合っていてこそ、長く続けられるという意味です。
人と一緒にいるのが好きな人なら、ジムでひとり黙々と運動するやり方より、グループランニングや勉強会のように仲間とする戦略のほうが、ずっと合っているかもしれません。反対に、ひとりの時間が心地よい人に団体活動をおしつけると、かえって動機がくじけてしまいます。
結局、同じ目標でも、人によって続けられる方法は違い、その方法が自分のアイデンティティと合ったときにはじめて習慣として根づく、というのがこの理論の実践的なメッセージです。
日々の暮らしですぐに試せる方法
この理論を実生活に生かす方法は、思ったほどむずかしくありません。ひとつめは、目標を「やらなければならないこと」ではなく「自分はどんな人間か」という文に書きかえてみることです。「やせなければ」のかわりに「自分は体を大切にする人間だ」のように、表現を変えるのです。
ふたつめに、つらい瞬間がやってきたら、その瞬間をあきらめのサインではなく、目標に近づいているサインとして解釈しなおす練習が必要です。
みっつめに、ほかの人がいいと言う方法ではなく、自分の性格に合った実行のしかたを探すことも大切です。
大きな決意よりも、ふだんの自分の姿から大きくはずれない小さな目標から始めてみるのも、よいスタートになるでしょう。アイデンティティが先に変われば、行動は自然についてくる、というのがこの理論の伝える核心です。
なぜいま、この理論があらためて注目されるのか
自己啓発のコンテンツがあふれるいま、意志力を強調するアドバイスは、かえって人を疲れさせることが多くあります。努力したのに目標を達成できないと自分を責め、その罪悪感が次の挑戦をさらにむずかしくする、という悪循環がくり返されるからです。
アイデンティティにもとづく動機づけの理論は、この悪循環から抜け出す手がかりを与えてくれます。失敗の原因を「自分はどうしてこんなに意志が弱いのか」ではなく、「この目標と方法は自分に合っていたか」へと移して考えさせてくれるからです。
見方を変えるだけでも、同じ目標への向き合い方が変わることがあります。目標の立て方、つらい瞬間の乗りこえ方、自分に合った戦略の選び方まで見直すタイミングなら、この理論がよい参考になるはずです。
結局、大切なのはどれだけ強く覚悟を決めるかではなく、その目標がいまの自分とどれだけつながっているか、なのかもしれません。次にどんな目標を立てるにしても、その目標が自分らしい姿とつながっているかどうか、一度自分に問いかけてみるのも役に立つと思います。
アイデンティティにもとづく動機づけの理論、自分の目標に当てはめてみると、どんなことを思いますか?コメントで意見を聞かせてください。
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