朝の光10分が夜の眠りを変える理由

目から入る朝の光は、脳の体内時計の基準点を合わせ直します。視交叉上核が一日を計るしくみと、明日の朝すぐに試せる光のルーティンをまとめました。

時間帯
07:00 朝の光
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睡眠・リズム
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4コマで先に見る

朝の光10分の力

  1. 1問題

    三日月の下で布団をかけて眠る人

    夜、眠れない…

    夜の眠りが遅くなる理由は、実は朝にあることが多いのです。

  2. 2しくみ

    昇る太陽と、その光を受ける目

    脳の中の24時間時計

    朝の光は目の細胞を通って、視交叉上核の体内時計を合わせ直します。

  3. 3実践

    日差しの下、木のそばを歩く人

    朝は外で10分

    起きたら外で10分光を浴び、夜は照明を暗くします。

  4. 4変化

    三日月の下で布団をかけて眠る人

    時間どおりの眠り

    夜になると松果体が時間どおりにメラトニンを出し、眠りが訪れます。

夜なかなか眠れないとき、私たちはたいてい夜の習慣から見直します。ベッドでスマートフォンを置き、コーヒーを控え、早めに横になる。どれも意味のあることですが、脳科学はもうひとつ勧めています。眠りの始まりは、その前日の朝からすでに決まりはじめているということです。その鍵は、朝に目から入る光です。

脳の中には、24時間より少し長い時計がある

私たちの脳の視床下部には、米粒よりも小さな神経細胞の集まり、視交叉上核(SCN)があります。ここが体全体の一日のリズムを指揮する中枢の時計です。体温、ホルモンの分泌、眠気と覚醒の波は、すべてこの時計のリズムに従っています。

興味深いのは、この時計がぴったり24時間ではないということです。外部の時間の手がかりをすべて遮った実験で、人の体内時計の周期は平均で約24.2時間と測定されました(Czeisler ほか, 1999)。一日に数分ずつでも遅れる時計をそのままにしておくと、眠る時刻と目覚める時刻は少しずつ後ろへずれていきます。そのため脳は毎日、時計を外の世界に合わせ直す必要があり、その基準となる合図のなかで最も強力なのが光です。

目には「見る」のとは別に「時間を測る」細胞がある

網膜には、ものを見るための錐体細胞と桿体細胞のほかに、メラノプシンという光色素をもつ特別な神経節細胞(ipRGC)があります。この細胞は形を見るかわりにまわりがどれくらい明るいかを測り、その情報を視交叉上核へ直接送ります(Berson ほか, 2002)。

光が体内時計を合わせる経路:目のメラノプシン細胞から視交叉上核、松果体のメラトニンまで 目・メラノプシン細胞 視交叉上核 中枢の体内時計 松果体 メラトニン 明るさの信号 時刻の情報 朝の光
朝の光は「見る」のとは別の経路で視交叉上核に届いて時計を早め、夜になって松果体がメラトニンを分泌する時刻もあわせて決まります。

視交叉上核はこの信号で「いまは朝だ」と確かめ、時計を前に進めます。その結果、夕方になると眠気を誘うホルモンであるメラトニンが、時間どおりに分泌されはじめます。反対に朝の光が足りず、夜遅くまで明るい光を浴びていると、時計は後ろへずれ続けます。実際に、眠る前に一般的な室内照明を浴びるだけで、メラトニンの分泌が始まる時刻が遅れ、分泌される時間も短くなるという研究があります(Gooley ほか, 2011)。

室内の明かりは、思ったより暗い

人の目は明るさの違いにすぐ慣れてしまうので、室内でも十分に明るいと感じがちです。けれど照度計で測ってみると、その差は大きなものです。一般的な室内照明はおよそ数百ルクス程度ですが、曇りの日の屋外でもふつうはその数倍から数十倍明るく、晴れた日の日差しは数万ルクスに達します。窓辺に座っているのと外に出るのとでは、体内時計にとってまったく違う合図なのです。

時間帯が、合図の意味を変える

光は、いつ浴びるかによって正反対の効果をもたらします。おおむね朝の光は時計を早めて夜に早く眠くなるようにし、夜遅くの明るい光は時計を遅らせて眠る時刻を後ろにずらします。だからこそ「光をたくさん浴びよう」よりも、「朝は明るく、夜は暗く」というアドバイスのほうが正確なのです。

今日の実践

  1. 起きてから1時間以内に外へ出てみましょう。 通勤の道を少し長めに歩いたり、ベランダや玄関先でコーヒーを飲んだりする程度で十分です。晴れた日は10分前後、曇りの日は少し長めにとりましょう。
  2. 太陽を直接見ないでください。 大切なのは目に入るまわりの明るさで、太陽を見つめる必要はまったくありません。この時間だけはサングラスを外しておきましょう(目の病気がある場合は、眼科医の指示に従ってください)。
  3. 夜は照明を反対に使いましょう。 眠る1〜2時間前からは、天井の明るい照明のかわりに低い位置のスタンドをつけ、画面の明るさを下げます。
  4. 週末も起きる時刻を大きく変えないでください。 朝の光の合図が毎日だいたい同じ時刻に届くことで、時計が安定します。

光は薬ではなく、合図です。一日二日で劇的な変化を期待するよりも、一週間ほど同じ時刻に朝の光を浴び続け、眠る時刻がどう変わるかを記録してみてください。不眠が数週間以上続くようなら、睡眠専門医に相談するのがよいでしょう。

参考文献

  • Czeisler, C. A. et al. (1999). Stability, precision, and near-24-hour period of the human circadian pacemaker. Science, 284(5423), 2177–2181.
  • Berson, D. M., Dunn, F. A., & Takao, M. (2002). Phototransduction by retinal ganglion cells that set the circadian clock. Science, 295(5557), 1070–1073.
  • Gooley, J. J. et al. (2011). Exposure to room light before bedtime suppresses melatonin onset and shortens melatonin duration in humans. The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, 96(3), E463–E472.

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