アファメーションを1000回唱えても変わらない理由――続ける力をつくる方法は、脳に届くやり方で

毎朝「私はできる」と唱えてみたことは、誰でも一度はあるでしょう。数週間たつといつのまにかやめてしまい、肝心の人生はたいして変わっていない気がして、むなしくなることもあります。でも、それがアファメーションそのものに効果がないからではなく、脳への届け方がまちがっていたからだとしたら?

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アファメーションが脳に届く方法

  1. 1問題

    人の口から出た吹き出し

    私はできる!

    毎日唱えても、数週間たつとやめてしまい、人生はそのままです。

  2. 2しくみ

    机の前で浅く息をする人と、頭上で鳴る警報ベル

    脳が反発する

    いまの自分とアファメーションのずれが大きいほど、脳はかえって反発します。

  3. 3実践

    人の口から出た吹き出し

    「私は〜する人間だ」

    現在形・一人称で、いまよりほんの少しだけ違うアイデンティティの文を書きます。

  4. 4変化

    一段ずつ上る階段と、てっぺんの旗

    行動がつながる

    網様体賦活系がその方向の情報を選んでとらえ、行動の持続力が生まれます。

毎朝「私はできる」と唱えてみたことは、誰でも一度はあるでしょう。数週間たつといつのまにかやめてしまい、肝心の人生はたいして変わっていない気がして、むなしくなることもあります。でも、それがアファメーションそのものに効果がないからではなく、脳への届け方がまちがっていたからだとしたら、どうでしょうか。

1000回言っても、 脳はずっと「ちがう」と言っていた

最近、脳科学と心理学の分野では、言葉よりも先にアイデンティティが変わってこそ、脳はそれを本当に受け入れる、という研究が次々と出てきています。

ウェンディ・ウッド(Wendy Wood)とジェームズ・クリアー(James Clear)の習慣研究:行動科学の指南書として有名な『ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣』(原題 Atomic Habits)のもとになった研究によれば、変化は3つの層(結果-過程-アイデンティティ)で起きます。多くの人は「何を得るか(結果)」や「何をするか(過程)」に集中しますが、本当の変化は「どんな人になるか(アイデンティティ)」から始まります。

ただ目標をくり返し唱えることと、自分をどんな人間として定義するかは、脳の中でまったく違うやり方で処理される、ということです。

今日は、なぜアファメーションが空回りするのか、そして脳が実際に未来の自分をつくっていくやり方はどんなものなのかを、ひとつずつ見ていきます。

アファメーションが空回りする本当の理由

脳は基本的に、もともともっていた自己イメージと違う情報が入ってくると、まず拒否感を覚えます。自分を気の小さい人間だと信じてきた人が「私は自信にあふれている」とくり返し言うと、脳はむしろその文を、現実とぶつかる情報として認識してしまうことが多いのです。心理学ではこれを自己概念とアファメーションのあいだのずれと説明し、ずれが大きいほど、かえって反発心ばかりが大きくなることが知られています。

だから、大げさすぎるアファメーションよりも、いまの自分とほんの少しだけ違う、信じられるくらいの文のほうが、脳にずっとよくしみこむそうです。しかも口でくり返すだけでは、感情も行動もついてこない空っぽの言葉として処理されがちなので、本当の変化が起きるには、その文を裏づける小さな行動と感情が一緒に積み重なる必要がある、というのが多くの研究が共通して指摘する点です。

アイデンティティが変わってこそ、 脳も信じる

何をするかより、誰であるかが先――行動の持続力が変わる

ダイエットを例にとると、「今日は運動しなきゃ」と決意する人と、「自分はこつこつ体を整える人間だ」と自分を定義する人とでは、行動の持続力が違うといいます。前者は毎回意志力を引っぱり出さなければなりませんが、後者はその行動がアイデンティティと一致しているので、わざわざがんばらなくても自然に続いていくことが多い、ということです。

このやり方をアイデンティティにもとづく習慣と呼びます。目標を達成することが先ではなく、望むアイデンティティにふさわしい人になることを先に決め、そのあとに行動をくっつける順番です。アファメーションも同じで、「私はこうなる」よりも「私はこういう人間だ」という現在形の文のほうが、脳に強く刻まれるといわれています。

小さな成功体験がひとつずつ積み重なるたびに、脳はそのアイデンティティを少しずつ事実として受け入れはじめ、そうして固まった自己イメージが次の行動をまた引っぱっていく、という循環ができあがります。

脳が未来を前もってつくっておくしくみ

私たちの脳には網様体賦活系という、数えきれない情報のなかから、いまの自分にとって大切なものだけをふるい分けるフィルターの役割を果たす部位があります。ふだん興味のなかった車がほしくなった瞬間から、街でやけにその車ばかり目につく経験は、誰でも一度はあるでしょう。これこそ、脳が大切だと登録しておいた情報を先に見つけ出すしくみです。

アファメーションも、この原理をそのまま利用します。自分をある種の人間だとくり返し定義しておくと、脳はそのアイデンティティに関わるチャンスや情報を、いつもよりずっとよくとらえるようになります。なかったチャンスが突然生まれるのではなく、もともとあったのに見すごしていたものが目に入りはじめる、というわけです。

結局、アファメーションが未来を変えるという話は魔法のような話ではなく、脳が何に注意を向けるかを先に決めておくことに近いのです。

脳に本当に信じさせるアファメーションのコツ

ひとつめは、文を現在形・一人称で書くことです。「私は自信をもつだろう」よりも、「私は落ち着いて話す人間だ」のように、いますでにそういう人であるかのように表現した文のほうが、脳に自然に受け入れられます。

ふたつめは、大きすぎず、いまの自分とほんの少しだけ違うレベルに設定することです。ずれが大きすぎると脳がうそだと判断してしまうので、少しずつ段階を上げていくほうが、かえって早く根づきます。

みっつめは、言葉だけで終わらせず、その文に合ったごく小さな行動をひとつずつくっつけることです。「私は健康を大切にする人間だ」と書いたなら、その日は水を一杯多く飲む、というふうに、文と行動をセットにしてこそ、脳はその情報を本当に保存するそうです。

今日から始められるアファメーションのルーティン

朝目覚めてすぐに大きな目標を並べるよりも、今日一日のなかで実践できるアイデンティティの文をひとつかふたつ、短く書き出すところから始められます。寝る前には、その文に関して今日実際にした行動を、一行でも振り返ってみると役に立ちます。

こうして書いて確かめる過程が何日かくり返されると、脳はその文を「いつかなりたいもの」ではなく、「もうしていること」として分類しはじめます。大げさな覚悟よりも、こうした小さなくり返しが結局アイデンティティを変え、そのアイデンティティがまた行動と未来を引っぱっていくしくみをつくるのです。

アファメーションが効かないと感じていたのも、実は脳のせいではなく、やり方の問題だった可能性が高いのです。ひとことを変えるよりも、その言葉にふさわしい自分を、毎日少しずつ積み上げていくほうが、結局は近道なのかもしれません。

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