前回は の地点で止まっていました。
4コマで先に見る
一日を観察しはじめたとき
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1問題
通知が次々にたまっていくスマートフォン もう1時間?
デリバリーアプリに15分、ショッピングサイトに20分。一日がただ流れていました。
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2しくみ
2つの神経細胞が枝を伸ばしてつながる瞬間 注意が脳を変える
神経可塑性:よく注意を向けるほうへ、脳回路は実際に組み替えられます。
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3実践
開いた本とペン 時間を書き出そう
一日を記録して観察すると、目的のない時間が数字で見えはじめます。
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4変化
一段ずつ上る階段と、てっぺんの旗 方向が生まれた
観察が一日を確定させるように、行動がまだ決まっていない未来をつくります。
正直に言うと、私はしばらくのあいだ一日を「流して」いました。デリバリーアプリを開いたり閉じたりするのに15分、買うものもないのにショッピングサイトを眺めるのにまた20分。ある日、一日の過ごし方をのぞいてみると、そんな時間が思っていたよりずっと多かったのです。そのとき、ひとつの疑問が浮かびました。私はいま自分の時間を「観察」しているのだろうか、それともただ流されているだけなのだろうか。その問いが、量子力学と脳科学をもう一度見つめ直すきっかけになりました。
自分の一日を「観察」しはじめて変わったこと
初めて時間の記録を始めたとき、正直、これは予想外でした。一日のなかで「目的のない時間」がどれくらいあるかを数字で確かめた瞬間、何か脳が違う反応をしているような感覚がありました。漠然と「時間がない」と思っていたものの多くが、実は方向がなかっただけなのだと、そのとき初めて気づいたのです。
この経験を脳科学の考え方で説明すると、なかなか興味深いものです。神経可塑性(Neuroplasticity)という考え方があります。神経可塑性とは、脳の神経回路が、繰り返される注意と行動によって物理的に組み替えられる性質のことです。簡単に言えば、自分がどこによく注意を向けるかによって、脳そのものが少しずつその方向へ変わっていくということです。
一日を記録しはじめた瞬間、その「観察」という行為そのものが、すでに脳に信号を送っていたわけです。 これが量子力学の観測者効果(Observer Effect)に似ていると思いました。観測者効果とは、粒子が観測される前は複数の状態が同時に存在する重ね合わせ(Superposition)の状態にあり、誰かが観測した瞬間にひとつの状態に確定する現象です。もちろん、人の脳が電子レベルの粒子と同じように働くという意味ではありません。
ただ、「観察しなければ何も確定しない」という原理は、日々の行動のパターンにもかなりよく当てはまります。
実際に、ロジャー・ペンローズ(Roger Penrose)とスチュワート・ハメロフ(Stuart Hameroff)は、脳の中の微小管(Microtubule)で量子レベルの情報処理が起きうるとするOrch-OR 理論を提唱しました。Orch-OR とは「調和した客観的収縮(Orchestrated Objective Reduction)」の略で、意識そのものが量子力学的な過程から生まれうるという仮説です(出典:Hameroff & Penrose, Physics of Life Reviews, 2014)。
まだ学界で完全な主流の合意に至った理論ではありませんが、脳とミクロの世界の接点を真剣に探る試みであることは確かです。 実際に体験してみて、理論の完全さよりも大切なのは「観察するという行為そのもの」でした。一日をのぞきはじめただけで、デリバリーアプリを開く習慣が減り、そのかわりにほかの選択肢が生まれたのです。網様体賦活系(RAS)という考え方も、これにつながっています。
網様体賦活系とは、脳が数えきれない情報のなかから、自分が集中しているものに関係する信号を選んでふるいにかける、フィルターの役割を果たすしくみです。観察の向きを変えると、RAS がほかの情報をとらえはじめます。
- 神経可塑性:注意を向ける方向へ、脳回路が物理的に組み替えられる
- 観測者効果:観測した瞬間、重ね合わせの状態がひとつの現実に確定する
- 網様体賦活系(RAS):自分が集中している対象に関係する情報を選んでとらえる、脳のフィルター
- Orch-OR 理論:意識は脳の中の微小管の量子過程から生まれうるという仮説
まとめ:一日を「観察」しはじめるだけで、脳の神経可塑性と網様体賦活系が働き、行動のパターンが変わっていきます。
未来は決まっていないことを「行動」で証明する方法
私はしばらくのあいだ、「どうせ自分はこういう人間だ」という決めつけをいつも抱えて暮らしていました。朝起きると、今日もきっと疲れるだろう、この決断もどうせうまくいかないだろう、というふうに。ところがいまは、「食事のあと」というわずかな時間を使ってランニングをする人になりました。「今日はもう横になって休もうかな」と思っても、起き上がってランニングシューズを履いて出かけると、いつのまにか走っている自分に気づきます。それがどれほど強力な「確定させる行為」なのかを、量子力学の重ね合わせの考え方を通して、あらためて考えるようになりました。
「『今日は疲れすぎているから、もう横になっていよう』と先に結論を出してしまうと、脳は『疲れている』という状態だけを確定させてしまいます。けれど『とりあえずランニングシューズを履いてみようか?』と判断をしばらく保留し(重ね合わせの状態を保ち)、行動で観察を始めると、横になっている現実のかわりに『走っている自分』という、まったく別の現実が確定したのです。」
重ね合わせ(Superposition)とは、観測の前に粒子が複数の状態を同時にもっている現象です。測定するまで、どの状態も確定しません。私の経験では、これは少し違うふうに読めます。結論を先に出してしまった瞬間、脳はその結論を確かめる情報だけを集めはじめるのです。
反対に、判断をしばらく保留すると、それまで見えなかった第三の選択肢が目に入ってくることが、実際にありました。 量子もつれ(Quantum Entanglement)という考え方も印象的です。量子もつれとは、空間的に遠く離れたふたつの粒子のうち、一方の状態が決まると、もう一方の状態も瞬時に決まるという、非局所的なつながりのことです。これを人と人とのあいだにそのまま当てはめるのは飛躍になりますが、脳科学にはミラーニューロン(Mirror Neurons)という考え方が実際に存在します。ミラーニューロンとは、他人の行動や感情を観察するとき、自分が直接その行動をしているかのように反応する神経細胞です(出典:Rizzolatti & Sinigaglia, Nature Reviews Neuroscience, 2010)。
実際に、私が食事のあとの短い休憩時間に、毎日ランニングシューズを履いて歩いたり走ったりする姿を、じっと見ていた職場の同僚たちがいました。しばらくして、その同僚たちが「毎日食後にこつこつ体を動かしている姿に刺激を受けて、自分も早起きして朝に歩くルーティンを始めた」と話してくれたのです。 私が前向きな行動を観察して選んだ結果が、私ひとりの変化にとどまらず、ミラーニューロンのように、まわりの人たちの行動のパターンまで実際に変えたわけです。結局、前向きな状態を保とうとする努力が単なる気分の問題ではなく、まわりの環境や人々に物理的・心理的な影響を与えるという根拠が、脳科学のなかに実際にあるということです。
結局、私が出した考えはこうです。未来が決まっていないということは、なぐさめの言葉ではなく、いまどこに注意を向けるかが、実際に次の現実を決めるという意味なのだと。これを「量子的思考(Quantum Thinking)」と呼ぶ見方もありますが、私は大げさな用語よりも、その原理そのもののほうが大切だと思います。閉じた結論のかわりに、開かれた問いをもつこと。それが出発点です。
このテーマをもっと深く掘り下げたいなら、キム・サンウクの『量子物理学講義』や、チョン・ジェスンの『科学コンサート』のように、数式を使わず概念を中心にやさしく書かれた本がよい入門になります。実際に読んでみると、理論の難しさよりも、日常への洞察のほうが長く心に残りました。
まとめ:「重ね合わせ」とは結論を先延ばしにすることではなく、より多くの可能性を保ち続ける姿勢であり、その姿勢が実際の行動と選択を変えていきます。
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